Smiley face

【連載】 サッカー王国の光と影 第3回

【プロローグ】貧困者支援に取り組むサッカー元ブラジル代表のドゥンガ=仁尾帯刀氏撮影

 灼熱(しゃくねつ)の太陽が降り注ぐなか、ブラジル代表と同じカナリア色のシャツを着た屈強な男が、ブラジル南部ポルトアレグレの小学校を訪れた。到着を待ちわびていた子供たちや住民は、その姿を一目見ると、歓声を上げた。年配の人の中には、涙を流す人の姿も。

 「元気かい」「勉強を頑張ってるか?」

 子どもたちに笑顔で声をかけ、ノートや鉛筆など文房具を配ると、周囲を取り囲む子どもたちひとりずつに、サインをして回った。

写真・図版
子どもたちにサインをするドゥンガさん(右)=2025年2月25日午後、ポルトアレグレ、軽部理人撮影

【連載】 サッカー王国の光と影

W杯で5度の優勝を誇る「サッカー王国」ブラジル。貧困層が半数を占めるこの国では、ビニシウスのように貧しい出自を持つ選手が無数にいます。貧困層にとってサッカーとは何なのか。ブラジル社会の「現在地」を歩きました。

 カルロス・カエタノ・ブレドルン・ベーリさん(61)。本名は知られていなくても、通称名を聞けばピンと来る人も多いだろう。1994年のサッカーワールドカップ(W杯)で優勝したブラジル代表のキャプテン、ドゥンガだ。ブラジルでは「レジェンド」(伝説的選手)として知られる。ジュビロ磐田で4シーズン活躍し、日本でも知名度は高い。

 「子どもたちは、僕が優勝トロフィーを掲げた94年にはまだ生まれていないんだ。それでも慕ってくれるのはうれしいね」

 2000年の現役引退後、ドゥンガさんがライフワークとしているのが社会貢献だ。自身がプロとしてのキャリアを始めたポルトアレグレに点在するファベーラ(スラム街)や教育現場を中心に、食料や文房具を配っている。この日も、学校訪問後は近くのファベーラで食料や日用品を住民たちに支給した。

富と名声を手に入れたドゥンガさんが、私財を投じてまで支援活動に打ち込むのはなぜなのか。記事後半には、ドゥンガさんへのインタビュー動画とともに、日本代表でも活躍した三都主アレサンドロさんの思いなどを掲載しています。

 成功を収めたブラジルのサッ…

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